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暦の話

暦の話

そもそも暦は、農耕において計画的に食物を生産、収穫、貯蔵するために生活の知恵として生まれました。今からおよそ5000年前、古くは古代エジプト文明にまで遡ります。夏の初め、オリオン座の三つ星の左下に明るく輝くシリウスは太陽の直前に昇ります。それからまもなく雨季に入り、ナイル川氾濫の前兆とされるようになりました。そのシリウスを起点として夏至を定め、シリウス歴が誕生しました。

一方で、メソポタミア文明を築いたバビロニア人は、太陽の周期のみならず月の満ち欠けに注目し、一定の周期があることを発見したことから、太陰暦が始まります。

しかし、太陰暦は月をもとにするため1ヶ月は29.5日。1年で11日、3年で1ヶ月ほどのズレが生じてしまいます。そこで3年に1回、1年を13ヶ月にする「閏(うるう)」という調整のための1ヶ月が組み込まれるようになり、生まれたのが太陰太陽暦です。聖徳太子が活躍した飛鳥時代ごろ、日本にも中国から太陰太陽暦が伝来し、明治まではこの暦が使われていました。

日本で使われるようになった太陰太陽暦はさらに誤差の修正を繰り返し、1844年(天保15年)に改暦されました。これが「天保暦」であり、世界で最も正確な暦であったと言われています。機会式時計は北イタリアから南ドイツに至る地域で作られ、現在ではスイスやドイツが有名ですが、日本のセイコーも時計職人の技術が非常に高く、日露戦争では日本人の腕時計をロシア兵が悉く奪っていったという話を聞きました。日本は時計や精密機械もさることながら、暦に関しても世界随一の正確さを有していたのです。

画期的な閏によって誤差が調整された太陰太陽暦ではありましたが、地域によって閏の挿入タイミングがバラバラに広がってしまい、日程を決める際にトラブルが起こるようになります。そこで太陽暦を用いていたローマ帝国は、前述のシリウス歴をベースに4年に1度1日を加えて366日にするユリウス歴がつくられました。これが閏年です。こうして、強大な力を持っていたローマ帝国は、支配国でユリウス暦を広めていったのです。ちなみにユリウス歴というのは、古代ローマの政治家ユリウス・カエサルが紀元前46年に定めたことに由来しており、シェイクスピアの悲劇『ジュリアス・シーザー』は、ユリウス・カエサルの英語読みです。

ところが、ユリウス歴にも128年に1日のずれが生じることが発覚し、1582年にローマ教皇であったグレゴリウス13世がユリウス暦の改良を命じ、作らせたのが太陽暦です。日本ではグレゴリオ暦よりも優秀な天保暦を用いていたにも関わらず、明治維新を経て西欧列強と足並みを揃えんがために、グレゴリオ太陽暦が採用されることになりました。明治5年のことです。

その天保暦が、現在「旧暦」と呼ばれているものです。

そんな旧暦も確認できるカレンダーがこちら(笑)。

2020年からスケジュール帳を創りはじめ、2023年からは卓上カレンダーにしました。日付の下に旧暦の月日を入れて確認できるようにしてあります。日常ではグレゴリオ暦を使わないと、社会活動で日程が合わせられないので不便ですが、世界最高の暦であった天保暦を忘れずに身近に置いておくのも良いでしょ?

他にも多数の選日を盛り込んでいます。仏滅や大安で知られる六曜はもちろん、その日に割り当てられている十干十二支、二十四節気、満月と新月、上弦と下弦の月とその時刻、天赦日、一粒万倍日、不成就日、天一天井と天恩日の期間、八専とその間日、水星逆行の期間が一目で分かるようになっています。中国の陰陽五行、日本の文化、西洋占星術が合わさったカレンダーです。

利用される方向けに、六曜から順に解説しておくことにします。

「大安(たいあん)」
六曜の中で最も良い日とされ、何をしても上手くいき成功すると言われています。結婚式や入籍、地鎮祭、引越し、その他のお祝い事など節目の行事が行われることが多いです。また、何をやっても物事がうまく運ぶと言われることから、事始め=使い始めにもよい吉日とされています。

「先勝(せんしょう)」
先んずれば即ち勝つ、という意味を持ち、物事を早く済ませるのがよい日とされています。時間帯によって吉凶が変わり、午前中が吉、午後は凶とされます。

「友引(ともびき)」
語源は共引で、共に引き分けになる日。現在では、友を幸せに引き込むとしてお祝い事の日取りに適しているとされています。反対に、友人をあの世に引き寄せるという迷信から、葬式や法事は避けるべき日と認識されています。

「先負(せんぶ)」
先んずれば即ち負ける、とされる日。勝負事や急用を避け、控えめにするのが良いとされています。時間帯は、午前中が凶で午後は小吉と言われます。

「仏滅(ぶつめつ)」
もともとは物滅と書き、物事が終わるという意味があり、六曜の中では最も縁起の悪い日とされ、一般的には、婚礼を含むお祝い事を避けるべき日と認識されています。しかし、物が一旦滅び、新たな物事が始まるという考えもあり、断捨離や不要な縁を終わらせるには良い日とされ、悪縁を切り、新たにスタートしたい時には適しています。

「赤口(しゃっこう)」
全てが滅びる凶日という意味があり、仏滅の次に縁起が悪い日とされています。そのため、お祝い事には向かないと言われています。また、「赤」という字が火や血を連想させるため、火事や怪我には注意しましょう。時間帯は、正午だけは吉とされます。

「天赦日(てんしゃにち)」
すべての神様が天に昇り、天が万物の罪を赦(ゆる)す日とされ、この日に始めたことは成功すると言われています。財布の購入や使い始め、結婚にまつわることなど、新しい事をスタートするのに、これ以上ない最良の日とされています。開店、開業、財布の新調、使い始め、結婚、入籍、結納など、何をするにも良い日。

「一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)」
たった一粒の籾(もみ)が成長し、何万倍にも実をつけて立派な稲穂になる、という意味があります。そのことから、一粒万倍日は、新しく物事を始めるのに最良の日とされています。また、一粒万倍日と他の吉日が重なる日は、その吉日の効果が倍増するともいわれており、特に「天赦日」と重なる日は最高の開運日となります。

ちなみに、一粒万倍日と天赦日は下記の通りに定められています。

一粒万倍日
1月(立春〜雨水) :丑/午
2月(啓蟄〜春分) :寅/酉
3月(清明〜穀雨) :卯/子
4月(立夏〜小満) :辰/卯
5月(芒種〜夏至) :巳/午
6月(小暑〜大暑) :午/酉
7月(立秋〜処暑) :未/子
8月(白露〜秋分) :申/卯
9月(寒露〜霜降) :酉/午
10月(立冬〜小雪):戌/酉
11月(大雪〜冬至):亥/子
12月(小寒〜大寒):子/卯

二十四節気をもとに、各月に定められた十二支の日が一粒万倍日として割り当てられます。例えば、実際の月ではなく、立春から雨水が終わるまでを1月とし、1月の場合は「丑と午」と決まっていますので、十干は気にせず立春から雨水が終わるまでの丑と午の日が一粒万倍日となります。一粒万倍日は中国にはなく、日本独自の考え方です。天赦日は基本的に年に4回、規定された十干十二支となる日が該当します。

天赦日
1月(立春〜雨水) :戊寅(つちのえとら)
4月(立夏〜小満) :甲午(きのえうま)
7月(立秋〜処暑) :戊申(つちのえさる)
10月(立冬〜小雪):甲子(きのえね)

「天一天上(てんいちてんじょう)」
癸巳(みずのとみ)〜戊申(つちのえさる)の16日間。民間暦で、陰陽道で、天地を周回して人の吉凶禍福をつかさどる天一神(てんいちじん)が天に上っているとされる期間。ちなみに天一神は中神(なかがみ)とも呼ばれます。この間は天一神の祟りがなく、どこへ出かけるにも吉とされ、縁起をかつぐ相場師はこの日を相場が上騰するとして用いました。ただし、この16日間は、天一神が天に上る代わりに、天一の火神である日遊神(にちゆうしん)が地に降り、人家にとどまって祟りをするため、この間中は古来より掃除をするのに吉とされています。

「天恩日(てんおんにち)」
甲子・乙丑・丙寅・丁卯・戊辰
己卯・庚辰・辛巳・壬午・癸未
己酉・庚戌・辛亥・壬子・癸丑
以上の計15日。天の恩恵をすべての人が享受できる日と伝えられており、万事に対して縁起が良いと言われています。天恩日は常に5日間連続して訪れるため、吉日が続く特別な期間と捉えられ、この日には金運が上がるとも言われます。天から恩沢が下り、任官・婚礼などの慶事を行なうのに大吉とされています。ただし、葬儀のような凶事には向きません。

「不成就日」
旧暦
1月/7月 :3日、11日、19日、27日
2月/8月 :2日、10日、18日、26日
3月/9月 :1日、9日、17日、25日
4月/10月:4日、12日、20日、28日
5月/11月:5日、13日、21日、29日
6月/12月:6日、14日、22日、30日

以上のように日付固定で定められています。何事も成就しない日とされている選日のひとつ。約1週間に1度の頻度で訪れる身近な凶日として知られています。不成就日は、天赦日や一粒万倍日などの吉日と異なり、物事を行うのに縁起の悪い日とされています。作成しているカレンダーでは、天赦日や一粒万倍日と重なる場合、優先される不成就日のみを記載しています。

「八専」
壬子(みずのえね)〜癸亥(みずのとい)の12日間のうち、丑・辰・午・戌を間日(まび)として除くと残りは8日になるので八専と呼ばれます。陰陽五行説によると五行の同気が続き、物事が片寄る凶日とされ、雨の日が多いとも言われています。もともとは軍事上の忌日でしたが、針灸や、柱を立てることも不吉とされるようになりました。法事や婚礼にも厄日とされています。

「水星逆行」
占星術用語で、水星が逆方向に進んでいるように見える現象。水星は実際には太陽の周りを逆方向に回っているわけではなく、惑星が異なる速度で動いていることから生じる錯覚です。
およそ4ヵ月に一度、約三週間起こり、水星逆行中は通信、交通、人間関係などでズレが生じやすいと言われていますが、タイミングのズレをきっかけに有利に状況が運ぶこともあり、悪い影響ばかりとは限りません。